サンプラーは嫌いだけれど…Ensoniq MIRAGE
2005年 02月 04日
サンプラーの何が嫌いって、「お金がかかる」。基本的に波形編集(記録)装置であって、シンセサイザーとは違うから。自分でサンプリング素材を見つけてきて、せっせと音色ライブラリーを増やすのが好きならばいいけれど、そういう手間隙かかることは嫌いだし、プロ・ミュージシャンの演奏フレーズなどがサンプリング・ネタとして販売されているCDやCD-ROMって、バカみたいに値段が張るし。
と、そんなことを考えていたら思い出した機材があった。
それがEnsoniq(エンソニック)社のMIRAGE(ミラージュ)。
初めて目にしたのは、日本のJ-Rockバンド、レベッカのキーボーディスト、土橋さんが使用しているステージだった。ディストーション・ギターの音色をサンプリングして、キーボード・ソロを弾いていたのだけれど、全然ギターっぽくない。(というか、まだギターだろうな…と推測がつくだけマシなのかも知れないけれど…)。
この機種、本当にお世辞にも音がいいとは決して言えないモデルだった。(まぁ、何せ量子化ビット数が8ビットですから)。それでも世界を驚かしたのは、その発売価格だった。1985年頃だったか、この製品が発売されるまでは、FAIRLIGHT CMI(当時の日本国内価格で1,000万円以上)や、Emu SystemsのEmulator II(約200万円)があったけれど、MIRAGEは40万円を切る価格で登場したのだから。
それにしても液晶ディスプレーもなくて、二桁の数字だけの表示で、どうやって波形編集をしたのか、疑問で仕方ない。ループの設定も「感頼り」だったことだろう。
サンプラーが登場した背景を考えると、アナログ・シンセの時代に、「どんな音でも合成できる」ということをひたすら追求して行ったのだろうけれど、結局は「生楽器」はシミュレートできないという壁にぶち当たったからなのではないかと思う。
そこで「じゃあ、生楽器の音をそのまま取り込もう!」と、サンプラー全盛期が訪れたのだろうけれど、でもその後にPCM音源なるものが登場して、シンセサイザーのプリセットに、生楽器の基本波形を搭載してしまったから、サンプラーは「生楽器」のサンプリング装置ではなく、別の使われ方をするようになったのだろう。
サンプラーが残した偉大な功績と言えば、あの「ギャン!」と鳴る、「オケヒット」の音色の発明、登場だったんだろうなぁ…。